2009年04月26日

ss22

 あなたに手紙を送るのははじめてですね。いつも、伝えたいことはあったのに、こうして紙にあなたへの気持ちを書いていると、私が本当に伝えたかったことは一体なんだったんだろう、と考えてしまいます。紙という場所に、自分の思いを形にすることがこんなにも難しかったなんて! あぁ、本当にすいません。支離滅裂な文章になってしまいましたね。
 でも、私とあなたの関係というのも、元々良くわからない、曖昧としたものでした。
 私がはじめてあなたに会ったとき、あなたの隣には兄の姿がありました。
 私はあなたしか見えていなかったのに、あなたは兄しか見ていなかった。
 そして、それから数ヶ月後のあなたと兄の結婚式。親族一同の席に座らされたわたしのみじめな気持ちは、あなたには理解されることはないでしょう。あの日ほど、兄に嫉妬したことはありませんでした。
 けれど、あの頃はまだそれだけでした。
 まだ、兄はあなたを大切にしていたし、あなたも兄を愛していた。
 それが、変わってしまったのは、いつの頃からだったでしょうか?
 遠い街から帰ったときに、あなたの表情に暗い影がさすようになったのは。
 私なんかとは違い、社交的で友人も多い兄でしたが、それがあなたを悲しませるようなことになるなんて。あの、結婚式のときには、純雪のようなドレスに包まれていた笑顔が、そぼ降る雨のように悲しい色に染まってしまっていました。
 兄を問いつめても、軽くあしらわれるだけでした。
 思えば、あのとき、既に、私とあなた、そして兄の運命は交差して、遠くに過ぎ去っていたのかもしれません。
 遠いあなたを幸せにするために、私はどうするべきか? 延々と考えました。
 そして、出した結論が、あれでした。
 あの日、あの場所、あの交差点。
 久しぶりにあなたと兄と、私の三人で飲んだ帰り、ここしかない、と思いました。
 意を決っして、兄の背中に手を伸ばしました。
 私よりも少しだけ大きな、兄の背中。
 そこに伸びる私の腕。
 けれど、そのとき私の視界に入ったのは、それだけではありませんでした。
 無骨な私の腕と交差する、細く、白い腕。
 はっとして顔をあげると、同じように驚いた表情のあなたが私を見つめていました。
 どん、と兄をはねとばす自動車の音が遠くに響いていましたが、私にはあなたが耳元で呟いた言葉のほうが、はっきりと聞こえていました。
 今も、あのときの言葉が脳の奥から離れようとしません。
「あなたも、わたしと同じ?」
 この一言が……
 私も、あなたが好きです。
posted by 言人 at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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