2007年05月04日

習作:HTP_005

 突き動かされていくのは、なぜだろうか? 読んだばかりの文字列が、ぐさぐさと脳裏を切り刻んでいく。ボクは、こうして、文字を綴っていくしかできないのか。それとも、? ああ、だから、どうしたらよいのかわからない。フラッシュバック。おぼろな月。夜の花。焦燥感。轟音に身を包まれて。書くことの意義。意味はないのだろうけれど。それでも、書き続けるのはどうしてか? 自分の存在のため? 誰にも読まれない小説を! いや、少なくとも、ボクは読む。ひとりで書いて、ひとりで読む。午前二時のサイクル。浮かぶ。彼女の、泣き出しそうな顔。気丈な声。手をさしのべられない、ボク。一日の出来事が、走馬燈のように。連続する。細切れになる思考。パラレル。同時連続多発的に。文字列──轟音──冷えた夜の空気──タバコの煙──切ない顔──────そして? リフレインする言葉。饒舌に流れるギターソロ。考えない。考えなど及ばない。論理的になる。錠剤。傷は、無い。思いだす、あの日の夜。そう、いつも、夜だった。たったひとりで、暗い闇の中。光るモニタ。文字を打ち込み続けた。それが、無駄になることも知らず。いったい、何を書いてきたというのだ? それが、何になった? ボクは、誰だ? 何を問う? ああ、だから、こうしているのか。文字列を並べる。今、できることはそれだけだから。いや、そうなのか? こうしているうちにも、どこかで、何かが起こっている。これは、いったい何なのだ? 追いつめられる、追われる。感覚が、初期衝動。加速していく。BPMは? まだ、遅い。速く速く速く速く! 止まることを知らずに、停滞などとは無縁で。未来指向など知らず、鎖に繋がれる。もし、ボクが間違っていないのなら? 全ては、あるべきところにある。けれど、ボクはきっと間違えて居るんだ。朝の光を。夜の闇を。春の木漏れ日を、夏の太陽を。凍える冬の、冷たい空気。雪。白い。埋め尽くす。アルペジオの、優しい旋律が。だから──だから? そうやって、何かを理由にしようとする。それが、理由であるかもわからないのに。全て、何かのせいにする。外的要因。これは、ボクの内的要因により引き起こされている事態だというのに。自殺した文学者の顔が浮かぶ。ボクは、彼のようにはなれない。天才。それは──。安静な暮らしを。何事もない、悲しみも、苦しみも、驚きも、感動も、喜びも、焦燥も、切なさも、何もない暮らしを熱望する。飢えているのだから。まだ、終わらない。永遠。それは、こうして書き続けているテキストデータの、その先にあるのだろう。バイトの向こう側。見えない場所──みたくはない場所。目を背ける。そこに、ボクがこうして書いている理由があるのだから。電子データごときに。ボクは、電子データごときに、愚かな精神を千々に乱されている。弱いから。たった、あれだけの文章に、ボクの心はもろくも崩れ去ろうとしている。愚かだと笑えばいい。けれど、ボクにとってはそれが真実であり、隠しようのない事実となっている。全ては、ボクが悪い。まっとうに生きてこられなかった、ボクが。責めならいくらでも被う。全ては、ボクがやったことなのだから。名探偵が、犯人を指摘するように、ボクは己の罪を告発しよう。感傷に囚われた、哀れな心を救うものなど居ないのだから。これは懺悔なのか。それとも、告発文なのか。いや、そんなのどちらでも良い。ようは、その内容でボクの罪を暴き立てていれば、それで良いのだから。ああ、ごめんなさい。あの日、ボクは、こうして何かを書いていた。確かに、書いていたはずなんだ。でも、今となっては、それが思い出せない。どうしても、誰かに届けたかった思いがあるはずなのに。今、こうして、実際に誰かに届けるときになって、それが何かを忘れてしまった。とても大切な何かだったと思うんだけれど。ごめんなさい。あの日の言葉たち。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
posted by 言人 at 02:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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